人面猿の大合唱

 2004年4月に起きたイラク邦人人質事件。あれから一年半以上の月日が流れたわけだけど、事件が事件だけにまだはっきりと覚えている人も多いと思う。つい先日、イラクで人質になり、無事生還した今井紀明氏が公開しているHPを見つけた。そこでは、彼の肉声の他にも、彼に匿名で寄せられた事件に関する手紙を読むことができる。まあ当時あれだけ叩かれた事件だから、手紙の内容もそれなりに過激で、大概はろくでもない誹謗中傷ばかりの内容だった。
 そのなかでも特に目立った言葉が「自己責任」、「金返せ」。良識という名の仮面をかぶった匿名戦士達は、右に倣えと言わんばかりに同じようなことばかりぬかしてやがる。彼らのまともめいたしたり顔は何だ?まったくもって可笑しな話しだね。彼らは税金払って投票して他人に迷惑かけなければ良識人だと思ってやがる。ああなんと立派なこと!眩しすぎてまぶたが痛くなってくらあ。
 数々の批判者のなかに、社会の抱える病理に対して真摯な人間が一体何人いるんだ?結果的に多くの人々に迷惑をかけた今井氏だけど、18歳という若さで世にはびこる暴力に体当たりできる彼は、少なくとも自分の生活を守るだけで精一杯の個人主義者よりよっぽどマシだと思うね。彼のような人間がまだ日本に残っているだけで、僕はむしろほっとする。玩物喪志と揶揄されるこのやさくれた日本社会で、まだ世のため人のために動ける人間は貴重な存在だと思えないのか。二言めには「カネ」。これが高校、大学と世界でも有数の高等教育を受けてきた人間の発言とは思えない。
 ほとんどの手紙が匿名ということだけど、どれだけの送付者が自分の発言に対して責任がとれるのか?悪意、暴力、妬み、偽善、正義面。手紙のほとんどはクソみたいなのばかりだ。そんなふうにせっせと負の感情をかき集めることにいそしむぐらいなら、ちょっとは自分の過去を内省したらどうだ?
 最後に今井氏へ。あの事件で大きな失敗こそしたけれど、アホタレどもの暴力に負けずにこれからも果敢に攻めてほしい。あの失敗は決して無意味じゃなかったと証明してほしい。がんばれ、がんばれ、乗り越えろ。

NPO法人D×P 今井紀明のブログ