極細に見る最先端と想像力の隔たり

 今日診療所でインフルエンザの予防接種を受けてきた。病院にわざわざ針を刺されに行くのは億劫だったが、今年の年末は個人的な事情で体調不良でダウンしてる暇さえなさそうなので、致し方ない決断だった。しかし、注射をしてもらうのなんていつ以来のことだろう。まったく思いだせない。
 僕が行った診療所はいくつかの診療科を有する総合診療所であったのだが、予約制を採っているせいか受診者の数は多くも少なくもないといった感じだった。診療所はとても清潔であの胃を刺すような不快な臭いはなく、ホテルの会議場のようにパリッとした内装の病院だった。しかし、パリッとした内装とその容量に見合った適度な人の数、その整然とした状況のせいか診療所の中は病人たちの展示場のように見えた。
 ほとんどの人がそうだと思うけど、正直病人に囲まれているのは気分が良くないし、そこにいると自分が病人でないことが不適切であるようにも思える。受付を済ませ早くここから出たい気持ちでそわそわしていると、すぐに自分の名前が呼ばれた。まずは医師の方に簡単な問診をされ、そのあと別室で看護士の方に注射を打ってもらった。注射は左右どちらかの肘の少し上の箇所に打つのだが、針が入る瞬間は自分の腕の陰に隠れて見えなかった。そして看護士の方が「少しチクッとしますよ」と言いながら注射を打ったのだが、痛みは全然なく刺された瞬間も感知できなかった。
 なぜ痛みを感じなかったんだろう。蚊に刺されてもその瞬間がわかるのに。それだけ注射針が細かったのかな?そういえば、看護士の方はその腕がプルプルと小刻みに震えるくらい、かなり力を入れてワクチンを注入していた気がする。
 蚊の口吻より細い針なんて作れるのだろうか。まあ、米粒に文字が書けるくらいのボールペンがあるくらいだから、不思議なことではないのかもしれない。でも、そんな細い管に液体が通るありさまなんて僕には想像できないなぁ。